Case Study

全行員が自らデータを分析し行動につなげることができる 「営業マネジメントシステム」を構築。営業店による自律的な目標設定プロセスのモニタリングを実現。
左より 木原 光一氏、池川 正樹氏、篠田 貴志氏、三木 智也氏
事例概要
株式会社伊予銀行(以下、伊予銀行)は、2018年4月に、業績表彰制度に代わり、営業店が自ら目標とする項目や数字を策定する取り組みに着手した。

これに伴い、営業店は自ら地域のトレンドや変化をとらえ、目標設定を行ったうえで、これを達成するための、データに基づくプロセスのモニタリングを行うことが必要となった。

同行では、営業店の行員がデータを活用するためには、「今何ができていて、何ができていない」のかを視覚的にグラフや表で確認できる仕組みが必要であると考え、DYNATREKを採用し、3カ月という短期間での構築期間を経て、「営業マネジメントシステム」の運用を2018年10月に開始した。

001

システム導入の背景

13都府県にわたる
広域ネットワークの特色を
活かすための「現場で考えていく力」を
最大限に引き出す取り組み

伊予銀行は、愛媛県を中心に国内外に152の本支店、出張所、駐在員事務所を抱える地方銀行だ。ブランド・スローガンは、「Challenge & Smile ~感謝の心をこめて~」。九州・中国地方など瀬戸内圏域や近畿地区を中心に13都府県に渡る強固な地盤を誇っており、地方銀行第1位の広域店舗ネットワークを有している。

同行では幅広い地域において営業展開を行っていることから、エリアや店舗ごとに顧客層が大きく異なる。目標管理において、銀行全体としての経営計画から営業店に営業目標を割り振ることで評価を行う業績表彰制度の存在は、実績を定量的に評価する仕組みとして長く定着してきた。

その一方で、人口・事業所数減少によるマーケットの縮小やフィンテック等の新業態の台頭により地方銀行を取り巻く環境は厳しい。現場の自主性を尊重したお客さま本位の営業体制への転換を図るべく、業績表彰制度に代わり、営業店が自ら目標とする項目や数字を策定する取り組みを新たに開始した。

伊予銀行 執行役員 営業戦略部長 木原光一氏は、「銀行業務のデジタル化の進展や渉外チャネルの多様化、そして地域毎の環境の変化が進む中、広域に展開する当行の特色を更に活かすためには、『現場で考える力』を最大限に引き出すことが必要であると考えています。そのために本部が行うべきことは、目標の達成・未達という結果を問うのではなく、『どのような動き方をすればよりよい成果が得られるのか』という、データによる気づきを起点とし、プロセスに踏み込んだコミュニケーションの密度を上げることが重要です」と語る。

新たな取り組みでは、営業店ごとに運営計画を企画・立案する「方針管理」により、営業店が自店の市場環境に基づいて柔軟に運営方針を定められるようになる。営業店が策定した計画について、プロセスと成果を図る指標を可視化し、営業店自らPDCAを回しやすい環境を構築し、本支店間で情報共有することで本部は必要なサポートを行う。

そのためには、営業店が自店のビジネス状況を把握するうえで必要な情報に常にアクセスできる状態にしておくことが不可欠だ。以前は、営業店から情報を求められれば本部が対応するプロセスを取っていた。しかしながら各営業店が今後より一層、独自の切り口での情報を求めるとなると、迅速な対応が難しくなる。

そこで、同行は新たに「営業マネジメントシステム」を構想した。

002

システムの選定

データサイエンティスト
のみではなく、
ビジネスユーザーが
データを読み解くための
システムが必要

伊予銀行 営業戦略部 課長代理 篠田貴志氏は、「今回の取り組みは、“あらかじめ決まっている目標を前提として、営業店が行動する”という文化を大きく変えるものです。そのため、目標の立案に必要なデータ分析・活用を、営業店でも実行できるようにしたいと考えました。見たい情報や使いたい情報は、営業店によって異なってきます。多様化する営業店のニーズに、本部がデータを『切り出して』対応するのではなく、営業店自らが自由に参照できる仕組みが必要になったのです。また、営業店自らがデータ分析をするにしても、分析専担者を各支店に配置するわけにはいきません。行員が自らデータを読み解くことができるための、コンテンツの落とし込みや操作の簡易性が重要でした。」と話す。

営業店の行員がデータを活用するためには、「今何ができていて、何ができていない」のかを視覚的にグラフや計表で確認できる仕組みが必要だ。地区別、明細別など、情報の粒度を自由に変更できることが理想で、長期的な時系列データ を提供する必要もある。

さらに、情報の網羅性も不可欠だ。複数のシステムに蓄積されている情報に、ワンストップでアクセスできるようにすることで、業務効率は飛躍的に高まる。
同行 営業戦略部 課長代理 池川正樹氏は、「従来の『業績表彰制度』で計数やプロセス項目を管理していましたが、営業店経営計画(方針管理)に基づく営業体制においては、営業店毎に異なるプロセスから結果までの進捗状況を本部・営業店が効率的に把握し、PDCAを回す必要があります。このためには、銀行全体や支店毎の状況を把握したうえで、必要に応じて担当や顧客別にドリルダウンし、すぐに施策検討に入ることができる仕組みが必要と考えました」と語る。

これらの要件を短期間で実現できるプラットフォームとして、同行が選択したのはDYNATREKだった。直感的なユーザーインタフェース、豊富な金融機関での実績、そして追加開発が容易であることも評価した。

003

システムの導入

営業店が管理する
業務情報全体を
網羅する大規模システムを、
わずか3か月でリリース

同行 営業戦略部 三木智也氏は、「今回のプロジェクトは、営業店が管理する業務情報全体を網羅するシステムを3カ月でリリースする必要があり、非常に難易度が高いと感じていました。無事に10月にカットオーバーを迎えることができた要因は、コンテンツはDYNATREKの画面上でプロトタイプを作成しながら構築していく方式をとったため、一切手戻りがなかったことにあると感じています。また、『方針管理』に関わる業務情報は多岐に渡るために、複数の担当者から要件をヒアリングする必要がありました。そういったなかでもダイナトレック社のチームには、打ち合わせの際に要件をヒアリングしながらサンプル画面を作り、多くの関係者が関わる課題をその場で解決するなど、柔軟に対応してもらいました。結果として非常に効率的にプロジェクトを進めることができました」と語る。

収益管理システムとEBM(MCIF)、そしてホストや本部が管理してきた多種多様なExcel計表など、さまざまなシステムに蓄積された情報をDYNATREKで一元化する大がかりなプロジェクトは予定どおりに完了。2018年10月、下期の開始と同時にリリースし、全営業店での利用が開始された。現状を把握し、方針管理を立案しやすくするだけでなく、業務に気づきを与えてくれるシステムとしても利用できるようにした。

DYNATREKを使えば、グラフをクリックしてドリルダウンし、明細項目まで掘り下げることができる。営業店では、全体を見て気になる部分を掘り下げ、顧客別や担当者別に明細を見渡して今やるべきことの示唆を得られるようになる。担当者が、自分の担当顧客の長期的な関係性や自行のシェアをつかむことで、優れた提案に結びつけるヒントを得ることも期待できそうだ。

004

今後の展望

データに基づくコミュニケーションの
軸となるツールであるとともに、
行内の計数・プロセス関連情報の
還元基盤としていく

同行 営業戦略部 池川正樹氏は、「現在カットオーバーから約半年がたちましたが、このシステムは店毎に見るべきコンテンツも異なるため、日々よりよい使い方を模索しています。導入後の営業店の声として、ひとつには『従来は様々なシステムを打鍵して集めていたデータが一枚のExcelシートにすべて集約されたため、集計業務がとても楽になった』という点があります。本システムでは、『営業店カルテ』というコンテンツを提供しており、支店の方針管理のベースとなる各種計数の進捗状況を一覧で出力することができます。また、従来はCRMや融資支援システムを打鍵しなくては取得できなかったお客様との接触状況や、お客様内での当行シェアを、一覧やセグメント毎のグラフでモニタリングできるようになったため、『データの推移から得た気づきを基に行動を起こす』ことができるようになっています。」と話す。

また、同行 営業戦略部 篠田貴志氏は、次のように語る。「当行では分析用データベース(MCIF)の活用を促進するためにデータ分析ツール利用者を50名以上に拡大、データを基に施策を立案し、そして効果を検証するPDCAサイクルを回すことに取り組んでいます。もちろん本部内での取り組みは継続していきますが、一方で、現在の流れは『データ活用の民主化』であるともとらえています。お客様に最も近い場所にいる営業店の行員が自らデータを起点とした発想によって行動することで、本部では得られなかった気づきが生まれ、これまで以上に多様かつお客様ニーズに沿った営業活動ができると考えます。また、営業店の従来のデータ取得は電子帳票などが中心でしたが、このような情報インフラも含めて、営業マネジメントシステムに一元化できればと考えています。」

同行 執行役員 営業戦略部長 木原光一氏は、「当行は愛媛県内だけで117拠点ありますが、どの営業店も商圏の人口が減って高齢者率が上がるという状況に直面しています。そうなると、営業のやり方も変わってきますが、各店が同じ方向を向いて営業すれば良いわけではありません。顧客層の細かな違いや、担当者の得意分野などが異なりますから。営業店がさまざまな要因を突き詰めて、“考える現場”へと生まれ変わることが今回の取り組みのテーマ。営業店が日々の営業活動で感じた『変化』を自らデータによって検証し、本部はそのような取り組みを的確にサポートしていく。このような営業店毎のPDCAサイクルを適切に回していくことにより、お客様、そして地域への提供価値を更に高めていくことができればと考えています。」と話している。

企業情報
株式会社伊予銀行は、愛媛県を主要な営業基盤とし、四国のほか九州・中国など瀬戸内圏域や近畿地区を中心に広域に展開する地方銀行大手。2018年に創立140周年を迎えた同行においては、10年ビジョンとして定めている「瀬戸内圏域お客さま満足度No.1の金融サービスグループ」の実現に向けて、様々な革新的な施策を導入している。

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