Case Study
行内外に散在する膨大なデータの一元化や最高の顧客体験(CX)を提供するためのデータ活用基盤・組織体制を短期間で構築
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- 事例概要
- 千葉銀行では、2023 年3 月末までの中期経営計画の基本方針の1 つに「お客さまの未来のために新たな価値を創造し続ける」ことを掲げ、デジタル技術やあらゆるデータ資源を活用する取り組みを進めている。その一環として、行内外に散在する膨大なデータを集約し、一元的に活用できる新たなシステム基盤の構築に着手。2021 年3 月から約5 カ月という短期間で完了し、きめ細かいデータ分析で最適な顧客提案を促進。内製化の仕組みによる自行独自のコンテンツ拡充を進めている。
001
システム導入に至る背景
中期経営計画で掲げた
高難度なDXの実現を目指す
千葉県千葉市に本店を置く千葉銀行は、総預金残高約14兆円、総貸出金額約11兆円を誇る大手地方銀行で、国内に183拠点を展開している(2021年3月末時点)。地域に寄り添い、お客さまの声に耳を傾け、本質的なニーズに応えることで「真にお客さまの役に立つ銀行、いつの時代もお客さまに選ばれる銀行」を目指している。
同行では、2023年3月末までの中期経営計画「NEXT STEP 2023 ~未来へ、つながる・超える~」において、「金融機能の深化・深掘りと地域金融の新たなモデル構築、新規事業による『カスタマーエクスペリエンス(CX)』の向上」を掲げている。この計画は4つの基本方針を柱に、12の重要戦略の実現に取り組むものであり、その中で「新たな価値創造においてデジタル化や情報の利活用」を重要戦略の一つとして位置付けている。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するため、同行では以下の3つのムーンショット目標を設定している:
1.「最高のアプリ」「最高のポータル」をすべてのお客さまに提供する。
2.銀行内部で発生する「紙と印鑑の使用」をゼロにする。
3.行内外に保有する情報を「いつでも」「欲しいものが」「欲しい形で」得られるデータ検索システムを実現する。
これらの目標を達成するため、同行では中期経営計画の開始と同時に営業企画部内に情報戦略室を立ち上げ、データ一元化プロジェクトを推進した。このプロジェクトの目的は、「一元化されたデータの利活用によって、地域すべてのお客さまへ最高のCXを実現」することであった。
その一環として構築された新たな統合データベース(新DBM)は、既存のDB基盤を更改し、基幹系システム、CRM(渉外支援システム)、融資システムなどに格納されたデータとともに、口座入出金や投信・保険データなどの膨大なデータを統合するものとなった。
千葉銀行の営業企画部長・宮下大輔氏は、「お客さまへのアプローチにおいて、従来のプロダクトベースの発想(『売りたい商品があって、その対象となるお客さまを探す』)から、ニーズベースの発想(『平日休みの単身者のお客さまは、どのようなニーズがあるのか』)に変えていくことを目指しました」と語り、データ利活用の意義を強調している。
002
システム構築の経緯
データ一元化プロジェクト達成に必須な
3つのポイントの実現を重視
データ一元プロジェクトの着手に際して、同行では、プロジェクト達成のための3つの必須ポイントを定めた。
まず、1点目が「短期構築」だ。千葉銀行の基幹系システムやCRM、融資支援など複数のシステムを横断できるデータ統合基盤を5カ月という短期間で構築することを決定した。
2点目が「お客さま起点の分析」である。散在するデータを統合し、ただ検索可能にするのではなく、いかにお客さまのニーズに対して多くの気づきが得られるかを重視したという。そこで求められたのが「直感的な操作・分析が可能なUI」だった。
最後の3点目は「行内体制」だ。プロジェクトのゴールを新システム構築ではなく「営業店の情報ニーズに素早く対応できるPDCAサイクルの高速化」と捉え、お客さまのことをよく理解している行内担当者がデータ分析を実施できる「ユーザー部門主導の内製化」の実現を強く意識したという。
2020年4月に開始されたデータ一元化プロジェクトでは、まず「検討・検証」フェーズとして営業店や本部などに対して「どういうデータがほしいか」「どのようにデータを活用しているか」などをヒアリングし、データ一元化後の具体的な活用イメージを作った上で実証実験を開始した。この実証実験を多方面で支援したのが、ダイナトレックだ。この実証実験では、まず営業店へのヒアリングを通して、データの一元化によって実現したいことの「仮説構築」を開始。その際には、ダイナトレックが提供する仮想データ統合ツール「DYNATREK」を活用し、複数店の口座情報や為替データなど多種多様なデータを同ツールに集約、多角的なデータ分析を実施した。
宮下氏は「DYNATREKを活用すると、自分たちがほしいリストがたちどころに抽出され、すぐに画面で内容を確認できます。その様子を見たとき、この短期間のプロジェクトの実現性に対して納得感が得られました」と語る。
また、この段階から本番稼働を想定したデータ分析や結果表示などのモックアップ画面を構築し、現場の渉外営業担当者とイメージを共有した。リアルな営業現場での活用をイメージしながら検討を重ねて、本当に現場で使える画面遷移を追求したという。
千葉銀行が構築した検索アプリケーションは、ユーザーが検索ワードを入力すると、交渉履歴や入出金履歴の摘要などの膨大なデータを全文検索し、即座に該当先を一覧表示する。表示されたリストをクリックすると、行内の部門システムや、同行が「顧客カルテ」と呼ぶ一覧画面にも遷移する。これらの情報を基に、行員がお客さまに対して次の提案活動を迅速に実行することができる。
003
ダイナトレックが選ばれた理由
優れた機能を持つシステム面と、
高いプロジェクト支援能力を評価
実証実験の後、千葉銀行は2021年3月から本番プロジェクトを開始。また、DYNATREKを検索アプリケーションの基盤にすることを正式決定した。その理由について、宮下氏は「DYNATREKのシステムとしての評価」「ダイナトレックのプロジェクト支援者としての評価」の2点を選定ポイントに挙げる。
具体的なシステム面での評価として、まず宮下氏が挙げたのが「自由自在なデータ検索機能が、リスト配信の高度化の実現に適している」点だ。
「入出金の流れなど、これまで活用が難しかったデータを自由に検索し、営業店からのニーズに合った新たなリストを速やかに配信し続けることができます。当行の目的が正しく実現できるシステムを構築できると考えました」(宮下氏)
また、既存のDB基盤に蓄積されている顧客データと、収益管理システムが保有するデータなど、従来は行内に散在していたデータを統合して活用できる点にも魅力を感じたという。DYNATREKは、検索サーバ側でデータを統合したり、変換したりする機能に優れており、その特徴が、これまで銀行が蓄積してきた膨大な情報をフルに生かしたリストの作成に活用できた。
続いて、プロジェクト支援者という観点では「ダイナトレックは、プロジェクトを遂行するまでのコンサルティングやサポート段階での手厚さに特筆すべきものがありました。即座に行員のアイデアを形にして、スピーディにシステム化を推進できる高い能力があり、徹底的に当行に寄り添ってプロジェクトを支援するという姿勢を持ち合わせていました」と宮下氏は説明する。
こうした点から、千葉銀行におけるデータ一元化・活用プロジェクトはDYNATREKを活用して進められることとなった。
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004
システム導入の効果①
継続的なコンテンツ開発を可能とする
ユーザー部門主導の内製化体制を実現
千葉銀行は、約5カ月という短期間でデータの統合や検索アプリケーションを整備し、新しいデータ統合基盤の構築を完了した。DYNATREKの仮想データベースは、新DBM基盤や収益管理システム、行内に散在したExcelなどデータを蓄積する情報蓄積DBと接続。これらの情報は、本部の各端末のWebブラウザからでもアクセス可能だ。
同行はまた、継続的なコンテンツ開発を可能とする内製化の体制を整備。営業企画部内に新規リストの作成などの要望を随時受け付ける窓口を設置し、DYNATREKの仮想データベース開発者を育成することにした。
宮下氏は「お客さまセグメントを明確化し、仮説を構築するというマーケティングノウハウを行内に蓄積することが重要だと考えたからです。DYNATREKの管理・開発ツールを活用した行員が、タイムリーにコンテンツを追加可能な体制を構築しました」とその成果を語る。
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005
システム導入の効果②
お客さま起点の分析をきっかけに
営業部門の新たな価値提案が可能に
新システムの本稼働後、DYNATREKを活用した新たな推進リストの展開が進められている。従来のリストが「この商品はどのような顧客に提案できるか」という分析に偏っていた中、新システムで抽出したリストは顧客のニーズを起点とした切り口の提供を可能にした。
例えば、新システムでは「一定の資産をもち、かつ過去の交渉履歴で相続に関するご相談があったお客さま」や「平日の日中帯に連絡がとりやすいと推定されるお客さま」などの分析、さらには新規取引や資金ニーズが見込める企業リストを抽出することが可能となった。
「営業店のニーズに対応するリスト配信を継続的に実施し、営業店からの情報提供依頼への対応を非常に高速化できました。今では毎日のように営業店からリスト作成の依頼も受けており、評判は上々です」と宮下氏は述べている。
また、DYNATREKから出力されたリストはワンクリックでCRMや融資支援システム、地図システムなどと連携が可能だ。リスト上のお客さまの名前をクリックすると、そのお客さまに関連する様々なシステム情報をシームレスに閲覧できる仕組みが整備されている。
さらに今回のプロジェクトでは、DYNATREKから出力したExcelリストにも行内システムへのリンクをセキュリティを確保した上で付与する機能を作成。この機能は実証実験段階で営業店の担当者からも根強い要望があったもので、「目立たないところであるが、営業活動の生産性向上に極めて役立っている」(宮下氏)。
新システム運用後、窓口や渉外担当者から集まる膨大なお客さまの生の声を含めた分析が可能になった。その結果、お客さまにパーソナライズされた提案を実現。宮下氏は「データの活用において、取引履歴のデータのみならず、お客様から直接教えていただける貴重な情報を活用できる点が、地銀が持つ大きな強みです。これらのデータを有効に活用していきたいと考えています」と述べた。
006
今後の展望
データ連携・活用の拡充を図り
最高のCX提供への歩みを進める
千葉銀行では今後、お客さまのニーズを始点とするリストの作成や配信のスピードアップをさらに図る計画だ。新たな切り口でのリスト配信がどのような提案機会や成果向上につながるかを検証する予定である。
2021年9月から本部でのDYNATREKの活用拡大を進めており、将来的にはマネーロンダリングなどのリスク管理の強化、モバイルアプリや法人ポータルにおけるレコメンド機能といったマーケティング施策への活用も視野に入れている。宮下氏は「データ連携のさらなる拡充を進め、将来的には外部データやAPI共通基盤のデータなども含めた円滑な連携を指向していきたいです」と述べた。
また、「ダイナトレックは数多くの地方銀行に活用されているツールであり、当行が力を入れているアライアンスの中でも、金融機関の皆様と情報交換をしながら、相互に効果を出していきたい」と宮下氏は語る。
千葉銀行は、中期経営計画で掲げた目標を可能にする新システムを構築。金融機能の深化と地域金融の新たなモデル構築による最高のカスタマーエクスペリエンス(CX)の提供を目指し、着実に歩みを進めている。
- 企業情報
- 千葉県千葉市に本店を置く地方銀行で、国内に183拠点、海外に6拠点を構え、4,168人の従業員数を擁している(2021年3月末時点)。同行は「銀行の持つ社会的責任と公共的使命の重みを常に認識し、自己責任に基づく健全かつ適切な業務運営を通じて、社会からの揺るぎない信頼の確立を図る」ことを企業行動指針に掲げている。
現在、同行は第14次中期経営計画「NEXT STEP 2023 ~未来へ、つながる・超える~」に取り組んでおり、「金融機能の深化と地域金融の新たなモデル構築による『カスタマーエクスペリエンス』の向上」をビジョンとして掲げ、地域金融の発展に貢献している。
![株式会社千葉銀行](https://www.dynatrek.co.jp/dynatrek_cms/wp-content/uploads/2025/01/16_logo.png)