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「銀行、そして日本を元気に」ダイナトレックプロダクト責任者が語る理念と展望

1984年に創業、1991年より通商産業省における貿易保険システムの構築に携わって以来、数多くの金融機関に対してデータ支援を行うダイナトレック。データを可視化することで事業の発展を支援してきました。
主力プロダクト「DYNATREK」は、銀行内の複数システムを仮想的に統合し、一つの画面で必要なデータをリアルタイムに表示する仕組みを提供しています。これにより、業務の効率化や迅速な意思決定を実現し、多くの金融機関から高い評価を得ています。今回はプロダクト責任者である佐伯慎也に、事業に対するこだわりや今後の戦略についてお話を伺いました。

プロダクト責任者 佐伯慎也

ーこれまでのキャリアについて教えてください。

大学時代は、政治学とIT分野、特にネットワーク関連の研究に取り組んでいました。卒業後2006年ダイナトレックに入社し、それ以来BIツールの普及に力を注いでいます。

入社当初は主に官公庁、通信会社、製造業を対象としたプロジェクトを手掛けており、顧客ニーズに応じたBIツール導入を進めていました。その後、2012年頃から地方銀行向けの案件を多数担当するようになり、約10年間にわたり日本各地の地方銀行にBIツールを導入し、特に中期経営計画に基づく営業戦略実施の支援をデータ活用の側面から行ってきました。

現在はプロダクト責任者として、BI製品開発全般の統括を行っています。具体的には、お客さまの業務課題や要件を製品コンセプトに落とし込み、開発エンジニアに適切な仕様として伝達し、プロジェクト全体を推進する役割を担っています。また、完成したプロダクトが市場のニーズに合致するかどうかを見極め、製品ライフサイクルの全般を管理する業務に取り組んでいます。

ーダイナトレックに入社された当時、どういった点に魅力を感じていましたか?

当時、私はネットワーク技術やデータ活用に興味を持っていたこともあり、ダイナトレックが取り組んでいた「データを統合し、可視化して活用する」というテーマにとても魅力を感じました。当時から「データ統合と活用」は重要な論点でしたが、この20年のハードウエアとネットワークの進化をもってしても「データの分断」は引き続きDXの重要な懸案事項であり、奥の深いテーマだなといつも感じています。

実際に入社してみて印象に残ったのは、お客さまの業務課題に深く入り込み、その解決策を製品化していくダイナミックさです。ただツールを作るだけでなく、お客さまと一緒に成果を生み出していく点が、私自身の成長にもつながっています。

「仮想データベース」で地方銀行の業務課題を解消――プロダクトが解決する課題とは

ー地方銀行の方から特に多く寄せられていた課題には、どのようなものがありましたか?

弊社のお客さまである地方銀行が抱える主な課題は、営業活動以外の業務、特にデータの報告や集計作業の負担です。営業店では、今期の目標に対する進捗を把握するシステムがなく、Excelを用いた手作業での集計が必要でした。

また、取り扱う商品が多岐にわたるため、目標と実績を銀行全体で一元管理することが難しく、特に営業マネジメント層にとって店舗全体の進捗を迅速に把握する手段がありませんでした。

地方銀行には商品ごとに独立したシステムが複数存在しますが、これらを統合するためのデータベースを構築するには膨大なコストがかかり、柔軟な変更が難しいのが現状です。さらに、営業現場の評価基準は半年に1回程度の頻度で変更されるため、システム変更が追いつかず、最終的にExcelによる補完作業が避けられない状況が続いていました。

ーその課題に対して、仮想データベースという仕組みでどのように解決されたのでしょうか?

DYNATREKは『仮想データベース』を提供し、銀行内の複数システムを物理的に統合せず、仮想的に一つのシステムのように見せる仕組みを実現しています。

例えば、顧客一人一人の取引状況や接触履歴を一画面で直感的に把握できるようにします。従来は各システムからデータを抽出し、Excelで手作業による集計が必要でしたが、DYNATREKは銀行内の全システムからリアルタイムでデータを集約し、効率的な一画面表示を実現しています。また、銀行ごとの異なるニーズに対応し、柔軟なカスタマイズが可能です。

その結果、例えば100店舗を持つ地方銀行では、各営業店のデータ集計作業を劇的に削減でき、年間で数千万円規模のコスト削減効果を生み出しています。

さらに、銀行の重要な課題である「貸出金着地予想のリアルタイムな情報共有」も実現しました。DYNATREKにより、貸出着地見込みをリアルタイムで把握できるようになり、本部による各店舗への支援を迅速に行うことが可能となりました。

属する市場と成長の可能性、他社にはない強みとは?技術と提案力の融合で成果を創出

ーダイナトレックが属する市場や、特に強みとしているポイントは何ですか?

ダイナトレックは、BIツール市場とデータ統合ツール市場の両方で強みを発揮しています。特に地方銀行や自治体のように巨大なシステムが分散している業界向けに、DYNATREKを通じて大きな価値を提供してきました。

例えば自治体では、税や医療、住民基本台帳など、それぞれ異なる独立システムが存在しており、従来型のBIツールでは事前にデータを統合しなければならず、膨大なコストと時間がかかるという課題がありました。DYNATREKは、仮想データベース型BIツールとして、物理的な統合をせずにリアルタイムで必要なデータを取得し、一つのシステムに統合されているかのように見せることで、この課題を解決しています。

また、DYNATREKは、銀行や自治体ごとに異なる現場のニーズに応じた柔軟なカスタマイズを可能にしています。この柔軟性とリアルタイム性が他社にはない特長であり、導入効果を上げる要因となっています。

さらに、ダイナトレックは製品提供だけでなく、導入支援やコンサルティングも一手に担うことで、お客さまの業務課題を深く理解し、最適な解決策を提供しています。こうした包括的なアプローチが、競合との差別化ポイントとなっており、「仮想データベース型BIツール」という新しい概念を打ち出すことで、地方銀行や自治体の複雑なシステム環境に対応してきました。
今後もDYNATREKは、こうした独自の強みを活かし、さらなる成長を目指していきます。

ーこのプロダクトの市場が拡大した背景にはどのようなものがありましたか。

業務課題をお客さま目線で語ることができるようになったことが大きいですね。弊社はプロダクトと導入コンサルを一手に引き受けているので、データの結合が具体的にどのように役立つのかを明確に示すことができます。その結果、お客さまとしても導入効果が見えやすくなり、導入がしやすくなりました。

また「ユーザー会議」という、DYNATREKを利用するお客さま同士が導入事例や成功のストーリーを共有する場を設けたことが、事業拡大に繋がったと感じています。

ユーザー会議の様子

この事業も急拡大したというよりは、一つ一つのプロジェクトを大事にやってきたからこそだと言えます。地域金融機関のマーケットというのは、お客さま同士のコミュニケーションが活発なので、プロジェクトの成果や評判が業界内で共有されます。このプロジェクトで確実に成果を出し続け、導入実績が10件を超えたころから、当社の評価が大きく向上しました。

プロダクトの面では、フロント系の開発にReactやAngularを本格的に使用するようになったのはここ5年ぐらいなのですが、フロントサイドでアーキテクチャを新しくしたことで生産性が大きく上がりましたね。また新製品に関してはJavaからPythonへの移行を進めるなど、プロダクトのアーキテクチャを更新し続けることが重要なのだと感じているところです。

生産性が上がると、お客さまの要望に対して最短かつ一番エレガントに答えることができます。表やグラフの表現や描画のレスポンスなども、最新のアーキテクチャだと選択肢が広がるんですね。長く使い続ける製品だからこそ、アーキテクチャを常に新しくしておくことを重視しています。

ー現在のマーケットシェアや、今後の成長可能性について教えてください。

弊社は地方銀行の市場では業界のリーダーとなってきたとはいえ、まだまだ成長の余地があります。近頃は信用金庫でも導入事例が増えており、今後さらに拡大が見込まれます。また自治体向けのデータ統合はまだ発展途上の分野であり、新たな可能性を秘めています。

定期的な当社主催のセミナーや、年3回ほどの展示会での講演では、毎回30件ほど問い合わせをいただいております。そこから成約に繋げることでマーケットを広げる予定です。すでに待っていらっしゃるお客さまもいますので、これからも広がっていく期待がありますね。

展示会での講演

ー導入を円滑に進めるために、お客さまとの関係づくりやサポート体制で工夫していることがあれば教えてください。

お客さまがデータ統合やデータ活用のツールを導入されるにあたり、よくある課題というのが、ベンダー側が業務に対する充分な理解がないために、技術的な特徴の説明に終始してしまうということです。業務の知識が不足していると「データの統合」「レポート作成」といった機能面の説明に終始しがちですが、それでは「業務効率の向上」「導入後の具体的なメリット」をお客さまがイメージしづらく、意思決定を後押しするには不十分です。

この課題を解決するために、弊社は製品説明を「業務の言葉」に翻訳し、現場の課題を具体的にヒアリングして対応する体制を整えました。対話を重ねる中で、単なる「ツール導入」ではなく「業務プロセスの改善」としての提案を行い、効果的な導入を進めてきました。

現在では、こうした成功事例をもとに「同業他社での具体的な効果」を提示することで、新規導入時の不安を解消し、スムーズな導入を実現しています。このようにお客さまの業務目線で話せることが、弊社の強みとなっています。

金融機関の変革を導く戦略的パートナーへ――製品開発とコンサルティングを両輪とするダイナトレックの今後の展望

ー今後、ダイナトレックをどのような会社にしていきたいか、意気込みをお聞かせください。

地域、そして日本全体を元気にする会社を目指しています。その鍵を握るのは地域金融機関と自治体です。データの活用によってより一層、地域経済やコミュニティを支える存在へと進化することで、地域全体が活性化します。例えば、自治体がデータ活用で住民に必要なサービスをワンストップで提供し、地域金融機関は融資や預り資産の推進にとどまらず、ビジネスマッチングや課題解決型のサービスを推進する。この流れを支えるため、ダイナトレックはプロダクト提供に加えて戦略的なコンサルティング支援を強化します。

これまでダイナトレックは「DYNATREK」の開発と導入に注力してきましたが、今後はその活用を通じて、銀行や自治体の「戦略」を支援し、地域活性化に貢献する会社へと進化していきます。単にデータ統合分析ツールを提供するのではなく、それをどう活用するかまで支援することが重要です。
また、DX人材育成にも注力しています。銀行から出向してきた行員と当社コンサルタントが共に自治体や中小企業のDX支援を行い、銀行が地域企業を支援する際のモデルケースを構築してきました。この取り組みを全国に広げることで、地域金融機関の役割をさらに強化することが目標です。

今の銀行は資金の融資にとどまらず、営業支援や事業支援、DX推進なども行います。現在、多くの地域金融機関は「融資機関」から「地域のコンサルタント」への変革を求められており、当社はその変革を支えるノウハウとプロダクトを提供することで、地域に新たな価値を生み出します。

組織としては、「エンジニアファースト」「コンサルタントファースト」という文化を継続し、エンジニアとコンサルタントの距離が近い体制を維持します。この強みを活かし、迅速かつ高品質なプロダクト開発を継続していきたいと考えています。

ーこれまでどういう思想でプロダクトをつくってきましたか。

最も重視しているのは製品の「安定性」と「長期使用に耐えうる信頼性」です。金融機関をはじめとするお客さまは、製品を10年以上使い続けることを前提にしているため、技術やライブラリの選定も長期的なサポートが保証されているものに限定しています。新しい技術であっても、将来のメインストリームになり得る見込みがなければ採用しません。「新しいから試す」という考え方ももちろん大切ですが、お客さまの組織を支えるプロダクトだからこそ、最先端を追いながらも手堅い技術選定を行っています。

その中でも、お客さまのニーズに応える製品作りには妥協せず、金融機関や自治体などの「ラージエンタープライズ」のニーズを満たす独自性を追求しています。短期的な利益ではなく、長期的視点でお客さまと信頼を築き、確実に保守・進化させることを重視しています。

ーいま取り組んでいる課題、これから取り組んでいきたい課題についてお聞かせください。

現在の最大の技術課題は、「クラウドとオンプレミスの融合」です。金融機関は、長期保管が必要な機密情報をオンプレミスで管理する必要があり、クラウドとオンプレミスの分断が世界的な課題となっています。当社は、この分断を感じさせないシームレスな連携を実現することを目指しています。

この実現には、最新の認証技術や暗号化対応が不可欠です。一方で、DB2やOracleなどのDBMSをはじめとした従来型システムとの互換性も維持しなければならず、「最新技術」と「従来システム」の両立が鍵となります。

さらに、UI/UXの進化にも注力しています。今年リリース予定の新バージョンでは、UIを刷新し、モダン化を図る計画です。クラウドとオンプレミスを融合する高度な技術課題を解決しつつ、使いやすさを追求したUIを提供することで、UX(ユーザー体験)を向上させます。

また、当社はベンダー独自のシステムと新しいシステムを円滑に連携させる技術を蓄積しており、銀行業界のオープン化やクラウド化が進む今、過渡期における重要な役割を担っています。従来型システムとモダンなアーキテクチャの両方に対応できる製品を提供し、システム変革を包括的に支援することが当社の強みです。

銀行のレガシーシステムからモダンアーキテクチャへの移行を支援し、最適な製品とソリューションを提供し続けることで、変革を後押ししていきたいと考えています。

プロダクトと共にキャリアを築く――「新しい挑戦を続けたい」意欲ある人求む!

ーどんな価値観を持つ人と働きたいかをお聞かせください。

長期的視点で一つのプロダクトを育てたいという価値観を持つ方を歓迎しています。当社製品は長年にわたってお客さまに使い続けていただくことを前提に開発しており、継続性を重視しています。一つの環境でじっくり経験を積み、腰を据えて取り組んできた方が特に向いていると思います。

また、社内の風通しが良く、部門間の垣根が低いため、積極的にコミュニケーションを取れる方が活躍しやすい環境です。

特に、プロダクト開発に携わった経験がある方を歓迎しています。フロントエンドでもバックエンドでも構いませんが、受託開発とプロダクト開発では求められるスキルが異なるため、「自社製品をじっくり育てたい」という意欲を持つ方が当社にフィットすると考えています。実際、受託開発から転向した社員も多く、そうした経験を活かしてキャリアアップを果たしている社員もいます。

ーこれからのキャリアを考える人へ、メッセージをお願いします。

当社では、入社後まず開発チームに配属され、経験豊富な技術者がメンターとなり、丁寧にサポートします。週1回のコードレビュー会では、メンバーがコミットしたコードに対して具体的なフィードバックを行い、技術力の向上を支援しています。

また、スキルアップのための支援制度も充実しており、書籍購入やUdemyなどのオンライン学習費用は会社が負担します。さらに、必要に応じてベンダー主催の研修プログラムにも参加できるため、最新技術の習得も可能です。
キャリアパスは明確で、開発エンジニアとして実績を積めばチーフに昇進し、メンバーを率いる立場になればマネージャーへの道も開けます。また、希望に応じて開発業務と並行してコンサルティング業務を担当することも可能です。ユーザー業務を深く理解したい方には、銀行向けDXコンサルティングに携わる機会も用意しています。

「金融業界の知識がないと難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。当社では専門知識を平易な言葉で説明し、業務の背景を丁寧に共有しています。複雑に見える業務用語も、数式などに落とし込むと意外と単純であることが多く、入社後にしっかりとキャッチアップできます。
当社が開発するのはBIツールであり、業務ロジックそのものが複雑ではないため、金融のプロである必要はありません。また、コンサルタント職で入社する場合も、入社後の学びを支援する体制が整っているため、未経験からでも安心して取り組めます。

成長意欲を持ち、自社プロダクトを長く育てたい方、そして新しい挑戦を続けたい方と共に働ける日を楽しみにしています!

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